第59回:「宮城県美術館  誕生から移転断念まで」

開催日時:令和5年3月7日(火)18::00〜
講演者: 大和田 雅人氏(フリージャーナリスト)
               元河北新報社論説委員

落ち着いた佇まいで一帯が市民の憩いの場にもなっている川内の県立美術館に移転の計画があるとの県のニュースを2019年の暮れに聞いて、“何故”と思った人も多かったと思います。
ご講演によれば1960年ごろから既に県内の芸術家たちが美術館の建設を願って活動し、寄付までも行って当時の山本知事を動かし、国立国会図書館を始め日本の多くの公共施設や美術館の設計を手がけた前川国男氏に依頼して湿気と保温に強い2重壁構造の美術館が漸く1981年に完成に至ったそうです。その後1984年には増築され、彫刻家の佐藤忠良氏の作品も寄贈されて広く県民に親しまれる美術館に育ってきたとのことでした。
こんな由緒ある貴重な施設を当時の政府の方針で老朽化した建物の改築などへの援助金を見込んで移転計画を立てたようです。精力的な取材と論説を通して県民の訴えを歴史的科学的根拠に根ざした反対運動へと展開し、1年後に計画の断念に導いた大和田氏の功績には感謝の限りです。