第57回: 「地域空間の創造 ―誰がどうやって進めるかー」

第57回: 「地域空間の創造 ―誰がどうやって進めるかー」

開催日時:  令和4年9月7日(水)18:00〜
講演者: 伊藤邦明 都市建築研究所代表取締役、東北大学名誉教授

先ずご自身の設計で2001年に竣工された雄勝硯伝統産業会館についてお話しされました。2011年の東日本大震災の大津波で雄勝湾一帯の家屋が跡形もなく流されたにも関わらず、同会館は構造体が無傷で残りました。先生は地元七ヶ浜町のご出身で津波についても熟知され、1階は大きなガラス開口部を通して津波の圧力を逃し、2階の収蔵庫は二重扉で外側開き、非常用電源は最上階に配置、屋上では灯台を意識したトップライトを使って救助を待つ、などの綿密な仕組みが功を奏したとの説明でした。引き続き、東北大学青葉山新キャンパスの施設(今あるものに手を加えて価値をあげる)、鶴岡市松ヶ丘開墾場(残して価値を上げる)、金ヶ崎城内・諏訪小路地区(よきものを保存する)、牡鹿慰霊碑(地域と鎮魂)などのご作品について紹介されました。いずれも歴史を重んじ、地域を意識し、人との繋がりを大切にする設計思想が根底にあります。余談として津波による難破から救助された宣教師と伊達政宗との出会いによってサンファンバウチスタ号が実現したと言うお話にも奥深い歴史を感じ取りました。